同居のファンキーばあちゃん②

投稿者: | 2017-07-26

入居した日の夜。
午後11時になると、家のベルが鳴った。まもなくばあちゃんと女性の話す声。

こんな夜中に誰だよ、と思うも、まあお客さんが来ることは別に悪いことじゃないと、気に留めずにいた。
が、その後愕然とすることになる。

彼女ら、その後午前3時ごろまで大音量でおしゃべるおしゃべる。

つうのも彼女、先述通り89歳。
ゆえ、彼女自身よりも、その「お客さん」が声張り上げて話すんだが、まーまたこの人の声が高い高い。

おかげで話の内容が部屋にいるこっちにも伝わり、彼女の素性も判明。
彼女、ばあちゃんのヘルパーさんだった。

 

ヘルパーさんと分かれば、あんまり強く文句も言えんなと思っていたが、いかんせんそのキンキン声が、初夜の不安を余計深める(笑)

や、その日だけだろ、きっと。明日は来ないだろ、こんな時間に。

 

 

……来た。

 

 

その日の夜も、その次の日も。。

それに並行し、段々彼女のリズムが分かってくる。
彼女のヘルパーさん、2交代制で午前11時から午後5時と、午後11時から午前5時まで2人来るようで。

橋本、夜中に執筆することもあるゆえ、5夜目にして、我慢の限界。
まだ部屋に転がるバラし前の段ボール眺めて、まさかの引越し取りやめとかも脳裏をよぎる。

彼女の家だし、何時に起きててても橋本には知ったこっちゃない。こうやって今まで過ごしてきたと言われれば、「じゃアンタが出てけ」ってなるわな。
……いやいや、そんなこたぁねえだろ。
こっちにも「平穏に暮らす権利」があるだろが。高い家賃払ってんだから。

色々考えたが、その日のヘルパーさんの午前3時半に響き渡る「Ah-hahahaha」が、ほら貝の「ぶおおおぉ」。
開戦と相成る。

 

「ねね、ちょっとごめん声のトーンを落してくれ」
「てかなんでこんな時間まで起きてんだ?」

すると、
「あぁー、ごめんなさい。すっかり議論がヒートアップしちゃったわ。ごめんなさい。うるさかったわね。以後気を付けるわ」

と、なんとも大人な対応に、逆に恥ずかしくなる。
橋本、入居したてってのもあって、色々考えすぎてたのかもな。
その後に訪れた静寂に、申し訳なさすら感じた。

 

が。
次の日の夜。
アンタら昨日の話覚えてるかバリな「Ah-hahahaha」祭り。
え、これ毎夜言わなあかんのか?

 

こうして我慢の半月が経ち、家から段ボールがすっかり姿を消した夜のこと、今度は彼女ら、何があったか喧嘩をおっ始める。

 

……こらぁ、あかんヤツや。
彼女らが喧嘩するのは勝手だが、ならば時間を選べと。
ヘルパーは雇われてるんだろ、なーんで89の相手に本気で言い返すかと。
ご近所の騒音問題、日本じゃ自治体会議モンだぞと。

 

橋本、再び部屋を飛び出し、
「何度も言わせないでほしいんだが、ちょっと時間を考えろ、え?」

と、違った角度で参戦。
すぐに喧嘩は収まり、彼女はベッドへ。変な静寂のまま、夜が明けた。

その日の午後のこと。
昼の部のヘルパーさんが、ノックとともに、突然橋本の部屋のドア下から一枚の手紙を投げてきた。

「?」

拾い上げて読むと

「I need to talk to you NOW」(今すぐ話がある)

とのメモ。

なんだなんだ?とドアを開けると、

口に人差し指を当て「シー」のサイン。
どうやらばあちゃん、昼寝しているようだが、彼女がベッドに入る前、その昼ヘルパーさんにこう言ったという。

「あの新しく入った子(橋本)は、私と生活リズムが違うから、来月出て行ってもらう」

 

( ゚Д゚)

 

なんやそれ。。
夜中の午前3時にヘルパーと喧嘩するばあちゃんと、誰が生活リズムに合うヤツがおんねん。

と思うのと同時に、なーんで橋本が「出ていけ」言われなあかんねん。
悪いこと何もしてへんのに、なんやこれ。出ていくならば自分の意思で出ていくわ。
おし、今回は何が何でも居座ってやる。

まあ、あの時、段ボールをのままにしてたら、ちょっと引越しし直しも考たんだろうが、部屋が片付かないのも落ち着かんし、何よりニューヨークの引越し、実は結構大変で、個人的にはもう2度としたくないと思ってた最中ってのもあり、最低1年はここにいたいという気持ちがあった。

昼ヘルパーさんに最大限のありがとうを言い、すぐさま行動に出る。
ばあちゃん昼寝から覚めた後、うちのおかんが日本から送ってきた東京名物の「ひよこ」を携え、ばあちゃんの元へ。
そこで、

「これ、うちの両親から、あなたに送られてきたものなんだ(嘘)」と。
「うちの両親が、あなたに『よろしく』と言っていた(嘘)」
「私も『すごくいい人だから心配するな』と言っておいた(嘘)」

と、あることないことをふんだんに使い、彼女をエンパイアステートビルの高さに匹敵するところまでヨイショする。

こういうのは指3本内の得意分野である。工場時代に出会った石頭の得意先のおかげで。

期待通り彼女、気を良くし、その場で「1羽」食べ始める。
もぐもぐしながらペンと紙を取り出し、「長文2枚の直筆手紙」を両親あてに書き始める。

「日本のお菓子をありがとう。あなたの娘はスーパーいい子」

 

とな。
まさかそこまでの効果は期待していなかったが、結局橋本は「出て行かなくてもいい」というお墨付きをもらった形になる。

 

結局橋本、昼ヘルパーさんと11羽の「ひよこ」に救われる。
が、今回のことで、「一線を画したい」という気持ちが先行し、あまり彼女とコミュニケーションをを取ってなかったことに気付き、反省。

 

……ま、残念ながらその昼ヘルパーさんは、橋本を助けてくれた後、ばあちゃんと大喧嘩して出ていったが。

橋本がこのアパートに引っ越してきて3か月。
新しいヘルパーさんは、昼・夜合わせてすでに6人目代わる。

それでも出て行かない橋本、自分がどんだけ変人好きか、今回のことで再確認。